2010年6月25日金曜日

労働審判

今日は、従業員側で残業代請求を申し立てた労働審判の第一回期日でした。

答弁書はこちらの想定したとおりの内容で、こちらの想定した以上の結論が
出ました。

労働審判は、その日のうちに審尋が行われ、依頼者のいる前で裁判官の
心証が開示されるのでかなり緊張しますが、うまくいった時はとても
気持ちのいいものです。

こういうときは弁護士として充実感を感じます。

2010年6月11日金曜日

ヤマダ電機事件・東京地裁H19.4.24 -退職後の競業避止義務

〔事案の概要〕

会社が、店長であった被告が退職に際して作成した「退職後の守秘義務と退職後1年間の競業避止義務及び退職金の半額と直近の給与6ヶ月分を違約金とする」旨の誓約書に違反して、競業他社に転職した。

〔結論〕

 被告が退職の際に差し入れた誓約書上の競業避止義務違反を有効と認め、退職金の半額と給与1ヶ月分の違約金の支払いを命じた。

〔判示事項〕

① 本件競業避止条項の有効性

・ 「会社の従業員は、元来、職業選択の自由を保障され、退職後は競業避止義務を負わないものであるから、退職後の転職を禁止する本件競業避止条項は、その目的、在職中の被告の地位、転職が禁止される範囲、代償措置の有無等に照らし、転職を禁止することに合理性があると認められないときは、公序良俗に反するものとして有効性が否定されると考えられる。」

・ 本件競業避止条項の目的は、原告の全社的な営業方針、経営戦略等の保護を目的としており、・・・・原告固有のノウハウ等につき原告が具体的に主張立証しなくても、被告の防御権が侵害されることはないと解される。

・ 転職が禁止される範囲について、「本件競業避止条項の対象となる同業者の範囲は、家電量販店チェーンを展開するという原告の業務内容に照らし、自ずからこれと同種の家電量販店に限定されると解釈することができる。」

・ 退職後1年という期間について、「原告が本件競業避止条項を設けた前記目的に照らし、不相当に長いものではないと認められる。」

② 損害賠償の額

・ 本件違約金について、退職金には賃金の後払としての性格と共に功労報償的な性格もあることも考慮すると、本件誓約書に違反した場合に退職金を半額とすることも不合理ではない。給与については、現実に稼働したことの対価として支給されるものであるから、現実に損害の立証がなく、違反の態様が軽微ではないことを考慮して、1か月分が合理的であるとした。

〔コメント〕

・ 固有のノウハウなど、具体的な営業秘密を保護の対象とするこれまでの判例とは一線を画している。

・ 労基法16条(違約金の定め、賠償予定の禁止)との関係は不明である。

・ 違約金の額を裁判所が認定してよいのか(民法420条1項「裁判所は、その額を増減することができない。」)

2010年6月9日水曜日

<労働審判>申し立て過去最多

<労働審判>申し立て過去最多 不況を反映http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100607-00000055-mai-soci 平成22年6月7日 毎日新聞

以前の投稿でも書きましたが、労働審判の申立件数が毎年すごい勢いで増加しています。
特に、東京や大阪の増加数は顕著のようです。

ただ、上記報道では、地方での申立件数がまだ少ないと指摘されています。

東京では年間1100件、大阪や名古屋では年間300件弱の申立がなされていますが、他方、甲府や和歌山、富山、松江、山形、青森などでは、年間で一桁の申立しかなされていません(平成21年度)。

たしかに、企業の数は東京や大阪が格段に多いとは思いますが、これほどまで差が生じるのか、いささか疑問です。

東京や大阪はひどい会社が多いとも思えませんし、逆に、地方の会社の方が労務管理がしっかりしているとも思えません・・・(笑)

地方の申立件数が少ないのは、地方では裁判などをしたら噂が広まってしまう、地方企業は地元の名士が多いので、そのような名士に対して裁判など起こせない、といった理由もあるのでしょう。

ただ、もう一つ理由があるとしたら、我々弁護士サイドの問題ではないかと思っています。

弁護士の中では、労働法は誰もが対応できるという分野ではなく、専門領域として考えられています。最近は労働審判が増加しているため、労働法を手がける弁護士も増えてはきていますが、まだまだ少ないのではないでしょうか。

労働法分野は、各種通達なども多く、最近は法改正が相次いでいるので、それらを追っていくだけでも弁護士にとっては大変な分野となっています。

都道府県労働局(労働基準監督署を含む)には年間100万件もの相談が寄せられているということです。

従って、我々弁護士も研鑽を重ね、これらの埋もれている事件を発掘し、不当な扱いを受けている労働者を救済していかなければならないのではないかと感じています。自戒をこめて。

2010年6月1日火曜日

東京以外の労働審判の運用は

昨日、東京に隣接する県の地方裁判所にて労働審判がありました。

建て替えをしたばかりの綺麗な建物で、労働審判のために専用で労働審判廷が作られているため、東京地裁よりも労働審判を行うのにふさわしい設備を備えていました。

例えば、東京地裁には専用の待合室がなく、廊下で長時間待たされたり、裁判官がわざわざ廊下まで当事者を呼びにくるなど、設備面では利用者にとって非常に不便でした。

それに比べると、昨日の裁判所は、申立人用と相手方用のそれぞれの待合室が設けられ、審判廷と待合室が内線で繋がっているなど、非常に便利な設備を備えていました。

しかし、労働審判の中身は、東京地裁とは比べものにならないほど、ゆったりとした進行でした。

東京地裁では、第一回期日の最初の一時間ほどで当事者双方への審尋・事実聴取を終えて、その後和解の話し合いを始めるのが通常です。ほとんどの場合、調停案の提示までが第一回期日で行われ、事案によっては、第一回期日に和解で終了することもあります。

これに対し、昨日の労働審判は、午後の3時間ほど審尋・事実聴取が行われたにもかかわらず、それでは終わらず、第二回期日に継続となりました。

また、裁判官からは、補充の書面提出まで求められるなど(口頭で答えたことを念のため書面にまとめてくれということでした)、東京地裁では考えられないような進行でした。

同じ労働審判でもこれほど手続の運用が異なるのかと、非常に驚きました。