2010年6月11日金曜日

ヤマダ電機事件・東京地裁H19.4.24 -退職後の競業避止義務

〔事案の概要〕

会社が、店長であった被告が退職に際して作成した「退職後の守秘義務と退職後1年間の競業避止義務及び退職金の半額と直近の給与6ヶ月分を違約金とする」旨の誓約書に違反して、競業他社に転職した。

〔結論〕

 被告が退職の際に差し入れた誓約書上の競業避止義務違反を有効と認め、退職金の半額と給与1ヶ月分の違約金の支払いを命じた。

〔判示事項〕

① 本件競業避止条項の有効性

・ 「会社の従業員は、元来、職業選択の自由を保障され、退職後は競業避止義務を負わないものであるから、退職後の転職を禁止する本件競業避止条項は、その目的、在職中の被告の地位、転職が禁止される範囲、代償措置の有無等に照らし、転職を禁止することに合理性があると認められないときは、公序良俗に反するものとして有効性が否定されると考えられる。」

・ 本件競業避止条項の目的は、原告の全社的な営業方針、経営戦略等の保護を目的としており、・・・・原告固有のノウハウ等につき原告が具体的に主張立証しなくても、被告の防御権が侵害されることはないと解される。

・ 転職が禁止される範囲について、「本件競業避止条項の対象となる同業者の範囲は、家電量販店チェーンを展開するという原告の業務内容に照らし、自ずからこれと同種の家電量販店に限定されると解釈することができる。」

・ 退職後1年という期間について、「原告が本件競業避止条項を設けた前記目的に照らし、不相当に長いものではないと認められる。」

② 損害賠償の額

・ 本件違約金について、退職金には賃金の後払としての性格と共に功労報償的な性格もあることも考慮すると、本件誓約書に違反した場合に退職金を半額とすることも不合理ではない。給与については、現実に稼働したことの対価として支給されるものであるから、現実に損害の立証がなく、違反の態様が軽微ではないことを考慮して、1か月分が合理的であるとした。

〔コメント〕

・ 固有のノウハウなど、具体的な営業秘密を保護の対象とするこれまでの判例とは一線を画している。

・ 労基法16条(違約金の定め、賠償予定の禁止)との関係は不明である。

・ 違約金の額を裁判所が認定してよいのか(民法420条1項「裁判所は、その額を増減することができない。」)

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