2010年4月23日金曜日

残業代の請求-使用者の対策編

先週、東京地裁に残業代請求の労働審判の申立て(労働者側)をしました。

最近、特に残業代請求に関するご相談が、労働者側及び使用者側ともに増えてきているなという印象です。

リーマン・ショック以降、労働条件の切り下げやボーナスのカットなどが多くの会社で行われるようになり、労働者側も自己防衛のため、権利意識を持つ方が増えてきたことがその理由であると思われます。

使用者側の相談に乗っていると、経営者や総務・人事の担当者などからよく出てくる言葉として、「最近は、従業員も権利意識をもつ人が増えてしまって・・・・」「残業代などを請求してきて、とんでもない奴だ・・・」と、労働法によって認められた正当な権利行使を、さも悪いことのように言う方がいます。

しかし、私はそのような発言はおかしいのではないかと思います。人を使って金儲けをしている以上、人を使う上での義務は果たすべきなのではないでしょうか。

経営者などからは、「残業代などを支払っていたら、会社が潰れちまうよ」と言われるかもしれませんが、そのような経営者には、『残業代を支払うことを前提とした賃金体系にしていますか?労働法を無視した賃金体系にしているのではありませんか?』と問いたいと思います。

通常、経営者というものは、採用の段階では、当該従業員に、支給可能な最大限に近い賃金を提示してしまうものです。しかし、後に、残業代を請求されてしまって、「とんでもない奴を雇ってしまった」となるわけです。しかも、基本給を高く設定していることから、残業代(原則は、1時間当たりの平均賃金の1.25%)もかなり高額になってしまいます。

とすれば、最初から、残業代支払いを前提とした基本給を設定し、残業代を適切に支払っておく方が、支給額は変わらないし、将来、残業代を請求されるリスクを回避できるという意味でもベターなのではないでしょうか。

以上のとおり、いろいろ述べてきましたが、最近は労働審判が前年の5割増で増えてきていますので、残業代を支払っていない会社にとっては、残業代請求のリスクはかなり高くなっているものと認識すべきではないかと思われます。

そのリスクを回避する方策としては、残業代の支払いを前提とした基本給を設定し、適切に残業代を支払うことが必須となりますが、すでに基本給を高めに設定している場合には、安易に基本給を下げると労働条件の不利益変更であるとして、訴えられる危険が生じてきます。

ただそのような場合でも、残業代請求のリスクを回避する方策はいろいろとありますので、社労士や税理士だけではなく、是非、弁護士に相談することをお奨め致します。

ただ、労働法に詳しい弁護士がまだまだ少ないという問題はありますが・・・。

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