2010年7月5日月曜日

三佳テック事件・最高裁H22.3.25 -退職後の競業行為

労経速2073号

〔事案の概要〕

被上告人の従業員であった上告人A及びBが、被上告人を退職後、上告人㈲サクセスを事業主体として競業行為を行ったため、被上告人が損害を被ったとして、被上告人が上告人らに対し、不法行為又は雇用契約に付随する信義則上の競業避止義務違反に基づく損害賠償を請求した事案。本件では、被上告人と上告人らとの間で退職後の競業避止義務に関する特約等は定められていなかった。

〔結論〕

本件競業行為は、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできず、被上告人に対する不法行為に当たらないというべきである。

〔判示事項〕

① 不法行為の該当性

・ 「上告人Aは、退職のあいさつの際などに本件取引先の一部に対して独立後の受注希望を伝える程度のことはしているものの、本件取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用することを超えて、被上告人の営業秘密に係る情報を用いたり、被上告人の信用をおとしめたりするなどの不当な方法で営業活動を行ったことは認められない。」

・ 「本件取引先のうち3社との取引は退職から5ヶ月ほど経過した後に始まったものであるし、退職直後から取引が始まったF社については、前記のとおり被上告人が営業に消極的な面もあったものであり、被上告人と本件取引先との自由な取引が本件競業行為によって阻害されたという事情はうかがわれず、上告人らにおいて、上告人Aらの退職直後に被上告人の営業が弱体化した状況を殊更利用したとも言い難い。」

・ 「以上の諸事情を総合すれば、本件競業行為は、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできず、被上告人に対する不法行為に当たらないというべきである。」

〔コメント〕

・ 「最高裁は、自由競争の範囲を割合広く捉える立場を示しており、不法行為の成立するケースを限定している」との解説がなされている。

・ 競業避止の特約があった場合、上記理由付けから違法性が否定されるとも考えられるし、本判例の射程外とも考えられる。

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